解決事例

【遺留分侵害額請求】生前贈与と使途不明金を主張し、調停で当初提示額を大幅に上回る解決を得た事例

50代 女性(長女)

「父の遺言で、同居していた兄にほとんどの遺産が渡ることになっていた」「兄は生前に多額の援助を受けていたはずなのに、それが一切考慮されていない」「父の預貯金が、生前にかなり減っていた形跡がある」——このようなお悩みを抱えて当事務所にご相談にいらっしゃる方は少なくありません。

本記事では、遺留分侵害額請求を行い、家庭裁判所の調停手続において、当初相手方が提示していた金額を大幅に上回る水準で解決に至った事例をご紹介します。当事務所には、現役の静岡家庭裁判所の家事調停委員を務める弁護士が所属しており、調停の現場で求められる主張立証のポイントを踏まえた対応が可能です。

事例の概要

  • ご相談者:50代女性(被相続人の長女)
  • 相続人:長男・次男・長女(ご相談者)の3名
  • 相手方:被相続人と同居していた長男
  • 争点:遺留分・特別受益(生前贈与)・使途不明金
  • 解決手続:遺留分侵害額の請求調停
  • 解決までの期間:ご依頼から約2年
  • 結果:当初相手方提示額を大幅に上回る金額で調停成立

ご相談内容

ご相談者は、被相続人である父親の長女の方(50代)でした。相続人は、ご相談者のほか、同居していた長男、次男の計3名です。

父親が亡くなった後、同居していた長男から「父が残した遺言がある」として一通の自筆証書遺言が示されました。その内容は、「自宅不動産および預貯金の大部分を長男に相続させる」というもので、ご相談者と次男の取得分はごくわずかに留まるものでした。

ご相談者は、父親が晩年、長男夫婦と同居していた時期に、まとまった金額の生前贈与(自宅の増築費用や事業資金の援助)を受けていたことを聞き及んでおり、遺言の内容に強い違和感を抱かれていました。また、父親の預貯金口座からは、生前、長男が管理していた時期に多額の出金履歴があり、その使途について十分な説明を受けていない状況でした。

ご相談者としては、「長男と直接やり取りするのは感情的にも難しい」「遺留分という制度があるらしいが、具体的にいくら請求できるのか分からない」「生前贈与や使途不明金をどう扱ってよいか判断がつかない」というお悩みを抱え、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

当事務所の対応

1.遺留分侵害額請求の意思表示(内容証明郵便)

遺留分侵害額請求権には、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年という短い消滅時効が定められています(民法1048条)。そこで当事務所は、ご依頼後ただちに、長男に対して遺留分侵害額を請求する旨の内容証明郵便を送付し、時効完成を確実に阻止しました。

内容証明郵便には、請求の意思表示に加え、相続財産の開示および生前の預貯金出金に関する資料の開示を求める旨を明記し、任意交渉の入り口を作りました。

2.相続財産の調査と遺留分額の算定

当事務所では、相手方から開示された資料に加え、金融機関に対して弁護士会照会などの方法により、被相続人名義の預貯金の取引履歴を可能な限り遡って取得しました。

その結果、以下の事実が明らかになりました。

  • 長男が父親の生前に、住宅の増築資金として数百万円単位の援助を受けていた事実
  • 父親が入院し判断能力が低下していた時期に、長男が管理していた口座から多額の現金出金が繰り返されていた事実
  • 上記出金について、父親本人の生活費や医療費だけでは合理的に説明がつかない金額であった事実

これらを踏まえ、当事務所は、生前贈与分については民法上の「特別受益」として遺留分算定の基礎財産に加えるべきであること、使途不明金については不当利得または不法行為として別途返還を求める余地があることを整理し、ご依頼者の取り得る法的主張を組み立てました。

3.任意交渉から遺留分侵害額請求調停へ

当初は任意の話し合いによる解決を目指しましたが、相手方は生前贈与の事実を否認し、使途不明金についても「父の生活費として使った」と主張するのみで、具体的な使途の説明や資料の提示に応じませんでした。

このままでは解決の見通しが立たないと判断し、当事務所は遺留分侵害額の請求調停を静岡家庭裁判所に申し立てました。

なお、遺留分侵害額請求訴訟は、いきなり地方裁判所に訴えを提起することも法律上は可能ですが、家事事件手続法257条1項の調停前置主義により、まずは家庭裁判所の調停手続を経ることが原則とされています。

4.調停での主張立証

調停は、調停委員という中立の第三者を介した話し合いの場です。感情的な主張ではなく、客観的資料に裏打ちされた合理的な主張を、分かりやすく整理して提出することが、調停を有利に進めるうえで不可欠です。

当事務所は、以下の点を資料と図表を用いて整理し、調停委員に提出しました。

  • 相続財産の内容・評価額の一覧表
  • 長男が受けた生前贈与の時期・金額・趣旨を整理した一覧
  • 被相続人名義口座の出金履歴と、合理的説明がつかない金額の抽出
  • 上記を踏まえて算出した、ご依頼者の本来の遺留分額と、当初提示額との乖離

不動産の評価については、相手方の提示額と当方の主張額に開きがあったため、近隣の取引事例や固定資産評価額、相続税路線価などの客観的資料を提示し、適正な評価額の合意形成を図りました。

5.調停成立による解決

数回の調停期日を重ねた結果、相手方も当方提出の客観的資料を無視することができず、最終的に、当初相手方が提示していた金額を大幅に上回る水準で調停が成立しました。ご依頼から解決までの期間は、約2年でした。

支払いについても、分割ではなく一括での支払いとし、調停調書を作成することで履行の確実性を担保しました。調停調書には確定判決と同一の効力があるため(家事事件手続法268条1項)、万一支払いがなされない場合にも強制執行が可能な状態となります。

解決のポイント

ポイント1:迅速な初動で時効を阻止

遺留分侵害額請求権の消滅時効は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年と非常に短く設定されています。ご相談の段階で時効完成まで残り時間が限られているケースも珍しくありません。本件でも、ご依頼から速やかに内容証明郵便を送付することで、まず時効の問題をクリアしました。

ポイント2:生前贈与(特別受益)の調査と主張

遺留分の算定において、一定範囲の生前贈与は基礎財産に加算されます。相続人に対する贈与については、原則として相続開始前10年間にされたものが算入対象となります(民法1044条3項)。相手方が自発的に開示しないケースでも、弁護士が代理人として金融機関照会等を用いて地道に資料を収集することで、主張の裏付けを作ることができます。

ポイント3:使途不明金への一体的対応

被相続人の預貯金を一部の相続人が管理していた場合、生前の不自然な出金が問題となることが少なくありません。本件でも、合理的に説明のつかない出金について、ご依頼者が相手方に対して別途不当利得返還請求等を検討できる状態を整えたうえで、全体解決の中で一体的に処理しました。

ポイント4:調停委員に伝わる資料作成

調停は、調停委員を介した話し合いであるからこそ、「調停委員がどのような情報を必要としているか」を踏まえた資料作成が成果を左右します。当事務所では、現役の家事調停委員を務める弁護士の知見も踏まえ、数字・時系列・関係図を整理した書面を用意し、調停委員が事案を正確に把握できるよう工夫しました。

ご依頼者様の声

「兄と直接やり取りしなければならないと思うと、それだけで眠れない日が続いていました。弁護士の先生に代理人として間に入っていただいたことで、まず精神的な負担が大きく軽くなりました。

生前の贈与や父の口座のお金についても、自分ではどこまで主張してよいのか分からなかったのですが、資料を一つひとつ集めて整理していただき、調停の場できちんと評価される結果になったことに、本当に感謝しています。思い切ってご相談に伺って良かったです。」

よくあるご質問

Q1.遺留分はいつまでに請求しなければなりませんか?

A.相続の開始および遺留分侵害を知った時から1年以内です。この期間を過ぎると、遺留分侵害額請求権は時効により消滅します(民法1048条)。また、相続開始から10年を経過したときも請求できなくなります。遺言の内容に納得がいかない場合は、できる限り早い段階で弁護士にご相談ください。

Q2.生前贈与は遺留分の計算にどこまで含まれますか?

A.相続人に対する特別受益に当たる贈与については、原則として相続開始前10年間のものが算入されます(民法1044条3項)。婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与が対象です。なお、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与を行った場合には、10年より前の贈与も算入対象となり得ます(同条1項但書)。個別事案の当てはめは弁護士にご相談ください。

Q3.預貯金が生前に減っていた場合、どう対応すべきですか?

A.まずは出金の経緯・使途について説明を求めることから始めます。合理的な説明が得られない出金については、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求の対象となり得ます。金融機関に対する取引履歴の取り寄せなど、弁護士が代理人として証拠収集を行うことで、主張の裏付けを作ることが可能です。

Q4.遺留分の請求は必ず裁判になりますか?

A.必ずしも裁判になるわけではありません。当事者間の任意交渉で解決するケースもあります。交渉で解決しない場合は家庭裁判所の調停手続に進みますが、調停も話し合いの延長であり、訴訟と比べて手続的な負担は比較的軽いのが一般的です。調停でも合意に至らない場合に、地方裁判所での訴訟へと進みます。

Q5.相談するタイミングはいつが良いですか?

A.違和感を覚えた時点でのご相談をお勧めします。時効の問題に加え、時間が経つほど金融機関から取得できる資料の範囲も限定されてくるため、早い段階で動き出すほど選択肢は広がります。静岡城南法律事務所では初回相談を90分無料でお受けしていますので、お気軽にご利用ください。

遺留分でお悩みの方は、静岡城南法律事務所へ

遺言書の内容に納得がいかない、特定の相続人だけが生前に多額の援助を受けていた、被相続人の預貯金の使途が不明である——こうしたお悩みは、ご自身だけで抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士にご相談いただくことが解決への近道です。

遺留分侵害額請求は、請求できる期間が限られているうえ、主張の組み立て方や証拠の集め方によって最終的な解決内容が大きく変わり得る分野です。特に、生前贈与や使途不明金が絡む事案では、早期に代理人を立て、必要な調査に着手することが結果を大きく左右します。

当事務所の強み

  • 現役の静岡家庭裁判所家事調停委員を務める弁護士が所属。調停の現場で実際に求められる主張立証のポイントを熟知しています。
  • 弁護士4名体制で、ご依頼者様のお悩みに組織的に対応します。
  • 静岡県に根差して15年。地域の皆様の相続問題を数多く解決してまいりました。
  • 税理士・司法書士とも連携しており、相続税申告や登記までワンストップでサポート可能です。
  • 初回相談は90分無料。完全個室でプライバシーにも配慮しています。
  • 静岡駅南口から徒歩4分。電話・LINE・メール・Zoomでもご相談いただけます。

「まずは話を聞いてみたい」という段階でも構いません。電話がご負担に感じられる方は、LINEやメールからのご相談・ご予約も24時間受け付けております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

※本事例は、依頼者の特定を避けるため、事実関係を抽象化・再構成したものです。

本記事を執筆した弁護士

静岡城南法律事務所 弁護士

山形 祐生

やまがた ゆうき

静岡県弁護士会所属 登録番号:44537

この事例と関連する取扱業務・料金表

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